キーマンから学ぶ生き方、働き方
毎月、さまざまなジャンルのプロフェッショナルや社長をお迎えして
働き方や生き方を誌面上でうかがっていきます。
ナビゲーターは、シューキャク・マン株式会社代表取締役の浜畑です。
宇都宮市中央1-10-12
校長 島田繁雄
工業機械とアート。そこにある〝ものつくり〟という共通項
宇都宮市のランドマークの一つでもある「大銀杏」。道路を挟んで木の反対側にあるガラス張りのビルが「宇都宮メディア・アーツ専門学校」だ。ここは昨年創立40周年を迎えた県内でも老舗の専門学校。美大受験のための予備校としてスタートし、今では放送・映像メディアやデザイン、建築、漫画などさまざまなジャンルの表現者を育成する学校として、クリエイターを目指す学生たちが集う。
この学校の校長を務める島田繁雄さんは、もともと県立工業高校の校長で、工業機械が専門というキャリアの持ち主。現職に就任してから4年になるという。「最初は専門外の分野の学校ということで、どうなることやらと思いましたが、工業もアートも“ものつくり”という部分では同じ。できるだけ授業に立ち会ったり、学生一人ひとりと話をしたりすることによって、徐々に理解が深まっていきました」と語る。
アート系の学生ならではの志向やスタイルを把握するのに多少の苦労はあったものの、かつての長い教員生活で培った学生への接し方、授業への取り組み方などが学生に受け入れられたことで、自信も深まったという。
一人ひとりに寄り添う指導が個々の進路を拓く
この学校の大きな特徴は、一人ひとりを大切にしつつきめ細かい指導を行うことで、その結果が高い就職率につながるということだ。中でも建築デザイン科における2級建築士の国家試験合格率は8割以上で、県内随一の実績を誇り、県内外の設計事務所や住宅メーカー、ハウスビルダーなどから毎年たくさんのオファーがあるという。「就職率は毎年90%を超えます。残りの10%はアーティストや作家志望の学生なので、それを合わせるとほぼ全員が卒業後の進路を決めているわけです」と島田さん。そんな実績の背景には教官が学生各々に合った対応をカスタマイズするという実に丁寧な指導があるようだ。「かつて専門学校といえば、大学に進学しない人が行く学校というイメージでしたが、今は違います。将来やりたいことや、卒業後の目標が明確に見えている人が多く、専門学校でなければ学べないものを求めて入学してきますね。学生一人ひとりはもともと潜在能力を持っており、それをいかに引き出すかが私たちの仕事です。入学当初は未知数でも少しずつその能力やスキルを高め、最終的には目標を達成する者がほとんどですね」。最近はきちんとゴール設定をしている若者が多いと聞くが、この学校の学生も然り、のようだ。それを後押しするのが、校長をはじめ、教官全員の熱意であり、指導力の高さなのだろう。
大切なのは40年間培ってきた〝ものつくり〟の精神の継承
このように学生の指導に情熱を注ぐ島田さんだが、オフはどのように過ごしているのかを問うと「実は前職を退いてからゴルフを始めましてこれがなかなか面白く、今では趣味といえるようになりました。季節によっては、スキーや山歩きも楽しんでいます。それから鉄道の旅も大好きですね」という答えが。かつて高校のサッカー部顧問だったというだけあって、ライフスタイルもアクティブだ。
そんな島田さんの今後のヴィジョンを聞いてみた。「本校が40年間学生たちを指導してきたその根底には“ものつくり”の精神があります。これからもそれを生かし、しっかり受け継いでいくことが本校の役割だと考えています」という言葉の通り、教育の多様性が問われる時代に、創造における学びのあり方を真摯にとらえる教育者の姿が、そこにはあった。