キーマンから学ぶ生き方、働き方
毎月、さまざまなジャンルのプロフェッショナルや社長をお迎えして
働き方や生き方を誌面上でうかがっていきます。
ナビゲーターは、シューキャク・マン株式会社代表取締役の浜畑です。
栃木県宇都宮市富士見が丘4-31-23
代表 佐山利光
美しいアトリエから始まる自由闊達なデザイン
ある時は無駄を徹底的に削ぎ落としたミニマルな建物を、またある時は木質の温かさを存分に享受できる住まいを。建築家・佐山利光さんが創る空間は、施主の想いや時代の空気などによって自在に変化する。そしてそんな自由闊達なデザインは、宇都宮市の小高い丘からの眺望が素晴らしいロケーションのアトリエから日々生まれている。
佐山さんは現在、「DIP建築都市設計事務所」を主宰しているが、そもそも建築家を志したルーツは大工や材木屋が点在する地域に生まれ育ち、彼らの仕事に身近に接したことに始まっているという。「大工さんがカンナ掛けをしたり、板図と言ってベニヤ板に原寸図を書いたりするのが面白く、それが建築への興味につながっていったんですね」と佐山さん。以降は持ち前の好奇心と向上心を発揮しながら研鑽を重ねて2000年に独立し、故郷である宇都宮に自身の建築設計事務所を構えた。その後、住宅・店舗など様々な建造物の設計を受注し、建築家としてのキャリアを積み上げながら現在に至っているが、その丁寧な仕事ぶりには定評があり、県内外からの問い合わせや依頼が引きも切らない。
「住まう人が幸せになる家」を創るために欠かせない「アイデンティティ」
佐山さんの会社のWEB集客を担当させていただいて5年以上になり、個人的にも非常に尊敬している佐山さんだが、その魅力的な人柄を作り上げる要素の一つは人やモノ、コトに対するあくなき探究心とそれらに対する洞察力の深さであると思う。そして、それは佐山さんの建築に対する姿勢の根幹を為すものだ。「設計をする上で欠かせないのは私自身がクライアントのことを正しく把握すること。
ヒアリングで得た要望や情報の他にも言葉や仕草から立ち上る感性や人生の悲喜こもごもまでも受け止めた上で、設計作業に入ります。私が目指すのは"幸せになる家〟。その人のライフスタイルはもちろん、人間が持つ本能的な生活のリズムのようなものを住まいに落とし込みながら、そこで暮らすことによって幸福感が得られる家を創りたいですね」。そんな佐山さんが仕事を遂行する上でもっとも大事にしているのが"アイデンティティ〟だ。「アイデンティティとは自己性のこと。住まう人の個性を投影させ、建物が性格や感情を表すように形づくることで“その人らしい”家になると私は考えます。そのためにも建築家のエゴや型を捨て、常にそのアイデンティティやオリジナリティを追求することが大切です」と語る。
建築家の普段のライフスタイルがもたらす上質な仕事
現在、多忙を極める佐山さんだが仕事に対するストレスは?と問うと意外にそれはないという答えが返ってきた。「日々の出来事や目に触れるもの、感じるものすべてを自分の設計に反映することができます。情報収集も大好きですし、自分に起きていることが他にないものを創るソースになると思えば、ストレスは感じませんね」。では、プライベートにおける趣味は何だろうか。「実は趣味らしい趣味はないのですが、いわゆる“上質なもの”には非常に興味がありますね。なので、一流旅館に泊まったり、有名アーティストのライブに足を運んだり、美術館巡りやエキシビションを通して様々なアートやカルチャー、テクノロジーなどを見聞しながら、クォリティの高いものに触れる経験を重ねています」という佐山さん。すべての建物に漂う洗練された上質感は、普段のライフスタイルや建築・ものづくりへの飽くなき探究心・豊富な経験から生まれている。そしてそれは数多くの作品をクリエイトしてきた建築家・佐山利光の仕事の大きな価値でもあるのだ。